第83章 彼女は山﨑夫人ではない

「全部、あいつのものだと?」

山﨑蓮は反射的に噛みついた。

「秘書が、どうして核心特許なんて持てるんだよ。何か汚い手を使って、署名を騙し取ったに決まってる!」

そうだ。そうに違いない。

谷口美桜は特許を盾にして、自分を縛りつけ、頭を下げさせようとしている――。

その様子を横で見ていた平野良平が、思わず口を挟む。

「山﨑社長、谷口さんがバイオ医薬専攻の院生だったこと、忘れてませんか。彼女は秘書だけじゃありませんよ」

「……は?」

山﨑蓮は信じられないという顔で目を見開いた。

山﨑寛が深く息を吐く。

「そもそも、あの子は葉山賢人の秘書じゃなかった。葉山グループの研究員だ。お前...

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