第88章 誠意がない

下山柚奈はオフィスに戻るなり、怒りに任せてドアをバンッと閉めた。

山﨑蓮は谷口美桜に「最高基準」を提示するだけじゃない。引っ越しまでさせるつもりなのか。

美桜がもう退職したことも、結婚証明書が偽物だってことも、あいつは全部わかっているはずだ。それでも、出ていけと言う。

――前は「愛してるのはお前だけ」って言ってたくせに。

私が戻ってきたのに、どうして追い出すの?

もし谷口美桜が山﨑グループと少しでも関わり続けたら、二人の縁はもっと深くなる。そんなの、絶対に許せない。

下山柚奈は苛立たしげにオフィスを行ったり来たりし、ふと一人の顔を思い出すと、すぐスマホを掴んで井上友也に電話をかけ...

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