第9章 彼は信じない

音声はまだ、横山社長と下山柚奈のやり取りを延々と繰り返していた。

ひと言ひと言が、毒で焼き入れした針みたいに――谷口美桜の胸の奥へ突き刺さる。

山﨑蓮が、突然スマホを奪い取った。

そして力任せに壁へ叩きつける。

バンッ。

鈍い破裂音と同時に、音声はぷつりと途切れた。

「もういい!」

焦点の合わない目。けれど声だけは、有無を言わせない乱暴さで満ちている。

「谷口美桜、お前また何の芝居だ? こんな偽物で柚奈を陥れようってのか」

足元に散らばった便箋とホテルの利用控えを、彼は一度も見下ろさなかった。

便箋には山﨑樹の筆跡。控えには下山柚奈の署名。目に刺さるほど鮮やかな証拠。

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