第92章 メンテナンス

夜の帳が下りる。山﨑グループの向かいにあるレストラン、その個室からは、にぎやかな笑い声が絶えず漏れていた。

下山柚奈はグラスを掲げる。

「今日はね、まずみんなにお礼が言いたくて。ここしばらく支えてくれて、本当にありがとう。お疲れさま」

彼女が会社に来てから、同僚たちと食事をするのはこれが初めてだった。だからこそ、社長夫人らしい顔も、きっちり作ってみせる。

山﨑樹が亡くなったこと、海外の保険会社が資産の調査中でカードが一時的に使えないこと。柚奈が口にしたのはそれだけだ。すると山﨑蓮は、迷いもなくサブカードを一枚切って寄越した。

奢るとなれば遠慮はしない。最初から、ひとりあたりの会計が...

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