第93章 彼は最初から知っていた

仕入先が土壇場で契約条項を変えたのに、なぜか責任だけが、着任してまだ3日目の秘書――谷口美桜に押しつけられた。

山﨑蓮は、最初から最後まで彼女を一度も見なかった。

口にしたのは、たったひと言。

「お前のことは、お前で片づけろ」

谷口美桜は当時の細部をもう思い出せない。ただ、何人もの部長に代わる代わる叱責され、山﨑蓮が最後まで一言も庇わなかったことだけが、焼きつくように残っている。

翌日。彼女は息を切らして山﨑蓮のもとへ駆け込み、証拠を突きつけた。そもそも自分はその案件の資料を一切受け取っていない。責任を負わされる筋合いはない、と。

そのとき山﨑蓮は、何と言ったか。

「じゃあお前...

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