第25章

この女性は目的を持って彼に近づいてきた。二週間も選択科目に出席しなかったのに、彼が講義を始めた初日に現れた。藤原家でも、何度も彼の視線を引きつけるような行動をしていた。彼女はそんな放蕩で虚栄心の強い人間だったのか。

彼の酒に薬が入っていたとしても、彼の頭の中には断片的な記憶が残っている。昨夜、彼は自分を完全に制御できなかったわけではない。むしろ、彼女の体に触れた瞬間、制御不能な選択をしてしまったのだ。

そのことを思い出し、高橋涼介は目を見開いた。深く冷たい目をして、手を伸ばし、机の上の書類を払い落とした。長い指を握りしめ、拳を机に叩きつけた。

「温水希、俺は完全に見誤った!」

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