第64章

「はい、はい!!」野口良一はすぐに立ち上がり、大きく手を振って、包厢の中は静かになった。ドアのところで、遅れて到着した山本月は高橋涼介のそばに立っている温水希を見た。今日の出来事の発端は……

ウェイターの一人のせいだった。

山本月は眉をひそめた。彼女が初めて温水希を見たとき、温水希がとても特別な女性だと感じた。

その特別さとは……

山茶花のように美しく、淡雅で静か、その澄んだ瞳はまるでこの世の汚れを知らないかのようだった。

そんな女性は、往々にして、最も男性の視線を引きつける。美しさに自覚がないからこそ。

……

夜の十時。

白石宴は代行運転を呼び、風間は運転手を待っていた。彼...

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