第2章 中島家を離れる

この女、ぶりっ子の化身か何か?

人として、少なくとも、ここまで計算高くあるべきではない。

中島結子のその言い草は、まるで中島夏美が恩知らずで、中島家で十八年間育てられた恩を少しも心に留めていないかのようだった。

もし生まれ変わる前の中島夏美だったら、この言葉を聞いて、中島結子が自分を受け入れてくれること、両親と離れずに済むことを知り、きっと嬉しさと感動で胸がいっぱいになっただろう。

だが残念なことに、生まれ変わった彼女は、すでに中島結子の本性を知っていた。

育ててもらった恩は確かに返さなければならない。しかし、中島家に留まる必要はない。

中島家を離れてこそ、彼女は自由に成長し、自分の世界を切り拓くことができるのだ!

中島夏美は手を引き抜き、胸に込み上げる吐き気をこらえながら、その手を懸命に布団にこすりつけた。

「お父様、お母様、お二人の実の娘さんが戻られたのですから。私も当然、私の実の父母を探しに行かなければ。きっと、彼らも私に会いたがっているはずです」

「実の父母?」

中島夫妻は、自分たちの実の娘が外で苦労していると知った時の、胸が張り裂けるような思いを振り返った。

人の身になれば、中島夏美が自らの血を分けた身内を探しに行くのを止めるべきではないだろう。

ただ、長年育ててきた中島夏美を手放すのは、やはり少し名残惜しい。

中島夏美はいつも素直で物分かりが良く、誇らしい娘だった。いずれは良家に嫁ぎ、中島家をさらに上の階層へ引き上げてくれるものと期待していた。

傍らでおどおどしている中島結子に目をやると、ああ、この結子という子も可哀想な境遇だ。

それに、結子も悪くない。何しろ実の子だ。どこを見ても可愛らしく思える。

これまで受けられた教育資源は乏しく、中島夏美ほど優秀ではないが、今こうして戻ってきたのだから、すべて良くなるだろう。

中島夏美は頷いた。「ええ、やはり血は水よりも濃いと言いますから。家の暮らし向きが良くないからといって、彼らを認めないわけにはいきません」

お父さんは頷く。「それもそうだな。夏美は親孝行で、感心だ」

中島結子は少し戸惑った。どういうこと?

どうして前の人生と違うの?

ダメ、このクズを行かせてはダメ。彼女が行ってしまったら、どうやって復讐するの?!

「お姉ちゃん、行っちゃダメだよ! あの松本家は団地に住んでて、外で大雨が降れば家の中では小雨が降るし、ゴキブリやネズミなんて叩いても叩いてもきりがないんだから」

それを聞いて、お母さんは目を赤くしながら中島結子を抱きしめた。「結子、今まで苦労したのね。お父さんとお母さんが、これから倍にして埋め合わせしてあげるからね!」

「お母さん、私は大丈夫。お姉ちゃんをちゃんと説得して、あんな苦労をさせないようにしてあげて」

「そうよ、夏美。あなたは甘やかされて育ったんだから、団地なんかで暮らせるわけないじゃない!」

中島夏美は一瞬、虚を突かれた。団地、前の人生で住んでいなかったわけではない。

中島結子に疎まれ、中島家を追い出され、キャリアまで潰された後では、団地は橋の下よりずっとマシだった。

「お父様、お母様、ご心配なく。私なら大丈夫です。たとえ団地でも、そこが私の家です。まさかお姉さんは、貧乏を嫌い金持ちに媚びるからここへ戻ってきた、なんてことはないですよね?」

「違う、そんなことない!」

中島結子は慌てて否定した。「お父さん、お母さん、信じて。私はそんな人間じゃないわ!」

「結子、私たちはもちろんお前を信じているよ」

両親が疑っていないのを見て、中島結子は再び説得を始めた。

「お姉ちゃん、このことは本当は言いたくなかったの。だって松本家は十八年間も私を育ててくれた、恩のある家だから。でも……」

そこまで言うと、中島結子は顔を覆って数回すすり泣いた。

中島さんは緊張した面持ちで尋ねる。「どうしたんだ、いったい」

「ううん、もう過ぎたことだから。でもお姉ちゃん、絶対に松本家に戻っちゃダメ! あの人たち、私を田舎に売り飛ばして結納金を手に入れて、お兄ちゃんの家の購入資金にしようとしてたの」

「なんだと? よくもそんな真似を!」

「そうなの。だから私はW市に逃げてきてバイトして、それでカフェでお母さんに会えたの」

中島結子はお母さんの胸に顔を埋め、さながら母娘の情愛深き一場面を演じてみせた。

そう、今生では、彼女自らがお母さんの前に現れたのだ。

前の人生のように、落ちぶれた二流大学に進んだ後で中島家に探し出され、何から何まで中島夏美に劣るという状況とは違う!

彼女はお母さんとよく似ていた。カフェで客のコーヒーをこぼして難癖をつけられていたところ、可哀想に思ったお母さんが助け舟を出してくれた。

そして偶然の機会から、中島結子こそが自分の実の娘であり、おそらくは病院で取り違えられたのだと判明したのだった。

「ふん、その松本家とやらに道理を説いてやらねばならんな。野蛮で下賤な田舎者め! この中島家が許さんぞ!」

お父さんは激昂した。自分の可愛い娘を虐待するとは!

「お父さん、やめて。だって、私を育ててくれた人たちだもの。責めることなんてできないわ。これからはもう会わなければいいだけだから」

中島結子はもちろん、お父さんを松本家に行かせるわけにはいかない。すべては彼女の作り話なのだから、乗り込まれて対質でもされたら、嘘がバレてしまう。

「馬鹿な子だね。あなたは優しすぎるのよ」

お母さんは溜め息をつき、中島結子の髪をそっと撫でた。

「お姉ちゃん、あなたも戻ったら……」

中島結子は意味ありげに言葉を濁した。

しかし中島夏美は冷静だった。まず、中島結子が自分の幸せを快く思わないことは、前の人生ではっきりと分かっている。

では、松本家は本当に彼女が言うほど酷いのだろうか?

それは疑わしい。もし松本家が彼女に酷い仕打ちをしていたなら、どうしてこんなに肌が白くきめ細やかで、手にたこ一つないのだろう?

思うに松本家は貧しくとも、この安上がりの娘を甘やかして育てたのだろう。ただ、中島結子が貧乏人のささやかな愛情など歯牙にもかけなかっただけだ。

「松本家がどれほど貧しくとも、断ち切れない血の繋がりがあります。やはり、戻りたいと思っています。それに、私はもう十八歳で成人です。家が大変なら、自分でアルバイトをして生活できますから、あまり心配なさらないでください」

中島夏美の決意が固いのを見て、両親はそれ以上引き留められなかった。

「わかったわ。じゃあ、行きなさい。でも夏美、覚えておいて。困ったことがあったら、いつでも中島家に戻ってきていいのよ」

お母さんの目は涙で潤んでいた。夏美は良い子だ。彼女も胸を痛めている。ただ、実の娘を差し置いてまで、というわけにはいかないのだ。

「ありがとうございます、中島さん」

「この子ったら、急によそよそしくなって」

お母さんは中島結子と中島夏美の間で視線を行き来させ、溜め息を一つ落とした。

中島夏美は呼び方を変えた。今ならまだ、中島夫妻も彼女に少しは同情を寄せているかもしれない。

しかし、中島結子がいる。もし自分がここに残れば、彼らはすぐに中島結子の側につき、自分のすることはすべて下心がある、自分が悪意を持って中島結子を陥れようとしている、と考えるようになるだろう。

それならいっそ早く立ち去り、中島夫妻に体裁の良い別れをプレゼントした方がいい。

中島結子も諦めるしかなく、松本家の住所を教えた。

W市の隣にあるY市、二線級の地方都市だという。

実の父母の住所を手に入れ、中島夏美は少し安堵し、退院後すぐにY市へと向かった。

中島家の物は何も持たず、簡単な着替え数枚と、Q大学に合格した際に支給された十万円の奨学金だけを携えて。

一方、中島結子は、中島夏美が本当に振り返りもせず去っていくのを見て、焦っていた。

病院では最初、中島夏美は退くことで進む作戦、つまり両親の同情を引こうとしているのではないかと考えていた。

ところが、中島夏美は本当に荷物一つ持たずに一人で去ってしまった。彼女は呆然とした。これは前の人生と違う!

しかし、ふと考え直す。中島夏美というあの小娘、中島家で贅沢三昧に育った身だ。苦労に耐えられるものか。

口では貧乏を厭わないと綺麗事を並べているが、数日も苦労しないうちに、泣きながら戻ってくるに違いない!

その時こそ、両親は彼女の貧乏を嫌い金持ちに媚びる本性を見抜き、彼女はもう自分と張り合えなくなる!

そこまで考えると、中島結子は得意げに笑った。

見てなさい。

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