第250章 落水

 北村由紀は憤然と立ち上がり、中島結子を指差して声を荒らげた。

「何が善人よ? わざとやったくせに、白々しい!」

 彼女の激しい動きに呼応して、ドラゴンボートが左右に大きく傾ぐ。足元をすくわれた北村由紀がよろめくと、山口夏美がすかさずその腕を掴み、船のバランスを取り戻させた。

 山口夏美は静かな口調で言った。

「誰も責めなくていいわ。人数が多ければ多いなりの、少なければ少ないなりの楽しみ方があるものよ」

 チーム編成はあくまで自主性に任されていた。彼女としても、無理強いしてまで誰かを自分の船に乗せるつもりはない。ただ、他の船が定員の十人に満たずとも七、八人は乗せている中で、自分たち...

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