第285章 桃李杯

山口美崎は愛おしそうに彼女を見つめた。

「馬鹿な子ね。桃李杯はただの名誉に過ぎないわ。あなたたち二人の命や健康に比べたら、ちっぽけなものよ。先生はこれまで十分に栄光を手にしてきたから、もうそんなものにはこだわっていないの」

そう言われても、中村優子の罪悪感はかえって深まるばかりだった。先生はわざわざ姉妹のために振付を考案し、この一年、レッスンのたびに一つ一つの動きや細部まで熱心に指導してくれた。全国的に名高いダンサーである山口美崎が、長年どれほどの時間を割いて自分たちを育ててくれたことか。それなのに、桃李杯のトロフィーすら持ち帰ることができず、これでは先生の指導力がないと陰口を叩く者も出...

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