第286章 銀賞

コンクール当日。山口夏美は母から贈られた牡丹の舞踏衣装を身にまとっていた。散りばめられた宝石とダイヤモンドが舞台照明を浴びて煌めき、審査員たちの目を眩ませるほどだ。群舞のないソロダンスは、どうしても迫力に欠けがちだが、この極彩色の豪奢な衣装がそれを補って余りある効果を発揮している。今日の出場者は群舞やペアがほとんどだった。複数人での演目の方が、ストーリー性や感情の交差を演出しやすいからだ。あえてソロでエントリーするのは、自身の踊りに絶対の自信を持つ者だけ。会場全体を見渡しても、五人にも満たない。

前日に笹野美沙たちと遭遇するハプニングはあったものの、山口夏美は全く意に介していなかった。ホテ...

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