第3章 彼女も松本家の人ではないのか?

寂れた路地の入り口に立ち、中から聞こえてくる露天商たちの呼び声に耳を澄ませる。松本家は、この路地の中にある。

彼女の実の父母?

前の人生では、ついに一度も会うことはなかった。

初めのうちは、自分の実の父母について尋ねたら、中島夫婦が心を痛めるのではないかと心配していた。

その後はさらに、中島結子との泥沼の奪い合いにどっぷりと浸かり、身動きが取れなくなってしまった。

それに、前の人生で松本家が彼女を探しに来ることはなかった。もしかしたら、彼らも自分ほどの年の娘が突然現れることなど望んでいなかったのかもしれない。

期待と躊躇、二つの感情が入り混じる。

もうどうにでもなれ、と中島夏美は深く息を吸い込んだ。

少なくとも一度は会っておきたい。それで自分の執念に区切りをつけたい。彼女はやはり、自分の家、親しい両親というものに憧れていた。

中島夏美はゆっくりと路地の奥へと歩を進めた。

その頃、松本家では。

「結子はまだ電話に出ないのかい?」と松本母が尋ねた。

「電源が切れてる」松本父は眉をきつく寄せ、深く煙草を吸い込み、大きな煙の輪を吐き出した。

実のところ、中島結子は中島家に戻ってから、松本家の人間を全員ブロックしていた。

「あの子、何かあったんじゃないだろうか。女の子一人で、W市に夏休みのバイトに行くなんて。あたしは最初から反対だったんだ」

松本母はため息をついた。

「本人がどうしても行きたがったんだ。俺が説得できるわけもない。子供も大きくなれば、自分の考えを持つもんだ」

松本父は煙草の火を揉み消した。「今から警察署に行って、捜索願を出してくる」

実のところ、彼は少し疑っていた。中島結子はわざと電話に出ないのではないかと。

というのも、前回中島結子と通話した際、彼女はひどく苛立った様子で、もう電話してくるなと言い放ったからだ。

しかし、これほど長く子供と連絡が取れないとなると、やはり心配でたまらない。

それにW市は新一線都市で、あんなに広いのに、結子はどこに泊まっているのかも教えてくれなかった。

その時、古びた鉄製の門の外から、ノックの音が聞こえた。

若い女性の声がそれに続く。「ごめんください、どなたかいらっしゃいますか?」

松本父がドアを開ける。「あんたは誰だ? 誰に用だ?」

ドアの外に立っていたのは、中島夏美だった。

彼女は目の前にいる、人生の苦労が刻まれた顔つきの中年男性を見つめた。彼は中島父よりもずっと老けて見え、肌は脂っぽく黄色く、額には三本の深い皺が刻まれ、生活の厳しさを物語っていた。

だが、彼と中島夏美の間に、似ている点は一点も見出せなかった。

中島夏美はしばらく彼をじっと見つめているうちに、実の父母に会えるという高揚感が次第に薄れていくのを感じた。

どうして彼は、何も知らないような顔をしているのだろう。

中島夏美は探るように尋ねた。「お宅には、もともと蘇……いえ! 松本結子さんという女の子がいませんでしたか? 今年十八歳で、私と同じくらいの」

松本父は頷いた。「ああ、いるが」

奥から松本母が松本結子の名前を聞きつけ、興奮した様子で歩み寄ってきた。「お嬢さん、結子のことを知ってるのかい? あの子の友達?」

松本母の心配そうな様子を見て、中島夏美は困惑した。

中島結子は中島家に戻ったことを、松本家の両親に話していないのだろうか?

どうして二人は、娘が失踪したかのような顔をしているのだろう?

中島夏美の複雑な表情を見て、松本父はドアから身を引いた。「中に入って話しなさい」

中島夏美は促されるまま中に入った。松本家はとても狭いが、きちんと片付いている。リビングは間仕切りで無理やり作ったようで、窓がなく、小さな食卓が置かれていた。

中島夏美はプラスチックの椅子に腰掛け、松本母が出してくれた大葉茶を手に取った。

松本母は少し申し訳なさそうに言った。「うちのお茶は安物だから、お嬢さんの口に合わなかったら、牛乳でも持ってこようか?」

「いえ、結構です」中島夏美はお茶を一口飲んだ。味は普通で、少し渋みがあったが、さっぱりしていて喉の渇きを潤してくれた。

松本母は焦ったように尋ねた。「結子は?」

中島夏美は逆に問い返した。「最近、彼女から連絡はありましたか?」

松本父が口を開いた。「週に一度は電話してるんだが、一昨日電話したら繋がらなくてな。まあ、充電切れだろうと思って、気にしてなかったんだ。そしたらこの二日間、何度かけてもずっと繋がらない」

松本母が口を挟む。「そうなんだよ。結子は小さい頃から自分の考えをしっかり持ってる子でね。またあたしたちに腹を立ててるんじゃないかと思って。学費のことはずっと工面しようとしてたんだが」

聞けば、中島結子は成績が振るわず、二流大学にしか合格できなかった。そして、その学費は非常に高かった。

彼女はさらに、松本父に金を出させて転校したいとまで言っていた。三十万元で大学のランクを上げられるとかなんとか。

松本家の経済状況で、そんな大金があるはずもなかった。

もっとも、その後中島結子は人生をやり直した。自力で中島家を見つけ出したのだから、当然、松本家が彼女のために貯めていた学費など必要なくなったのだ。

中島夏美はしばらく話を聞いて、事情を把握した。

「では、松本結子さんが中島家に引き取られたことはご存じないのですか? 彼女は今、中島結子と名乗って、W市の中島グループのお嬢さんになっています」

松本夫婦はひどく驚いた。

松本母はたどたどしく言った。「そうなの? あの子、そんなに良い家柄の出だったなんて」

松本父は少し信じられない様子だった。「だが、どうして結子はそんなことを俺たちに言わないんだ。何か危険な目に遭ってるのかと思ってたが……あんた、俺たちを騙してるんじゃないだろうな?」

中島夏美は仕方なく、W市のウェブサイトのニュースを検索して見せた。

中島家が行方不明だった娘を見つけ出したというニュースには、中島結子と中島夫婦の鮮明な顔写真付きの半身像が掲載されていた。

当時は、たくさんの記事が配信されたのだ。

中島家が、この正真正銘の娘にみじめな思いをさせたくなかったからである。

ニュースの写真をしばらく眺めて、松本父は漸く信じた。

「見つかって良かった。だが、あの子も、どうして一言も言ってくれなかったんだ」

まさか、自分たち育ての親に金をせびられるとでも思ったのだろうか?

そこまで考えて、松本父はまた首を振った。

松本母が言う。「結子は小さい頃から贅沢好きでね。叔母さんにも『下女の運命なのに姫様の暮らしぶりだ、気取ってる!』なんて言われてたけど、本当に姫様の運命だったんだねえ」

それを聞いて、中島夏美にある推測が浮かんだ。

「ということは、お二人は中島結子さんが実の子ではないと知っていたのですか?」

松本父が答える。「ああ。あの子は公園のベンチで拾ったんだ。当時、警察にも届け出たんだが、Y市で子供をなくした人はいないと言われてな。養護施設の環境も良くなかったから、俺たちで育てることにした。うちの暮らしも楽じゃないが、女の子一人、食わせて着せてやるくらいはなんとかなる」

松本母が続ける。「あたしたち、本当はもう一人娘が欲しかったんだけど、結子が来てくれたから、それで満足だった。まさか、育て上げた子が、あたしたちになついてくれないなんてね」

中島夏美は頷いた。どうやら取り違えではないらしい。誰かが彼女と中島結子を入れ替え、そして中島結子をY市に遺棄したのだ。

一体誰が? その人物は中島家に恨みでもあったのだろうか?

松本母は、この美しい少女が考え込んでいるのを見て、思わず尋ねた。「お嬢さん、結子のことを教えてくれてありがとう。こんなに長く話してたのに、まだ名前も聞いてなかったね」

「中島夏美です」

「じゃあ、あんたは中島家と?」

「私は中島家の元の養女です。私も最近、両親が実の親ではないと知りました」

「じゃあ、あんたは、親を探しに? 残念だけど、あたしたちはあんたの親じゃないよ」

松本さんは中島夏美を見つめた。綺麗で礼儀正しい子だ。もし自分の娘だったら、きっと大喜びしただろうに、残念ながら違う。

「辛かったでしょう」松本母もまた優しい婦人だった。彼女は、両親を失ったこの少女を不憫に思った。

中島夏美は礼儀正しく微笑んだ。「そういうことでしたら、もうお邪魔はいたしません」

立ち去り際、中島夏美はふと一つのことを思い出した。「そうだ、中島結子さんが、お二人が彼女を田舎に売って結納金代わりにしようとしていたと言っていましたが?」

松本家の両親は真面目な人間に見えたからこそ、中島夏美はそう尋ねたのだ。

「そんなことあるもんか!」松本父は驚いて松本母の方を見た。

松本母も何のことか分からず、しばらくして漸く思い出した。「本家の高木さんちの長男の高木俊哉くんが、W市の名門大学に受かったじゃないか。結子がW市にバイトに行くって言うから、何かあったらこのお兄さんを頼るといいよって言っただけだよ。それも本人の気持ち次第だし、あたしたちが子供を売るなんて絶対にありえない! それに、あの頃のあたしたちの暮らし向きからしたら、高木俊哉くんは良い条件だったんだよ」

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