第343章 疑念

だが、山口夏美はそんな不躾な質問など意に介さなかった。嫌悪の目を向ける労力すら惜しみ、取り囲む人だかりを掻き分けながら、完璧な営業スマイルを崩さずに車へと乗り込む。もちろん、新作の宣伝も忘れない。

「本日はこのような素晴らしい賞をいただけて、本当に驚いています。ですが、皆様にはぜひ私の次回作にこそご期待いただきたいですわ」

記者たちは車を包囲して引き留めようとするが、スモークガラスの窓は固く閉ざされている。その上、会場の入り口からは他の芸能人たちが次々と姿を現し始めたため、彼らは仕方なく山口夏美を諦めて新たな獲物へと群がっていった。特に、先ほどの生放送のカメラの前で露骨に不機嫌な顔を見せ...

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