第43章 義を見て勇を為す

逃げられないと悟った男は、苛立たしげに言った。「何様のつもりだ」

山口夏美は女の子を抱き起こし、優しい声で宥める。

「立てる? まだ痛い?」

女の子はお姉さんに慰められ、思わず彼女に抱きついて声を上げて泣き出した。「うぅ、お姉ちゃん、痛いよぉ……」

山口夏美は振り返り、男を睨みつけた。「謝ることもできないの?」

男は彼女を睨み返し、不服そうに吐き捨てる。「余計な世話だ!」

山口拓海は力強く自転車のハンドルを握りしめ、目を剥いて男を睨みつけている。

男はついに、不承不承といった様子で口を開いた。「チビ、悪かったな」

その時、交差点の向こうから若い女性が駆け寄って...

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