第71章 和田美咲の挑発

山田祥生は口をへの字に曲げたが、何も答えなかった。以前、彼と和田美咲の件が騒ぎになった時、家の先輩からも叱られたことがある。だが、所詮は若い者同士の色恋沙汰で、人死にが出たわけでもない。だからすぐに、皆何事もなかったかのように振る舞うようになった。

和田美咲がダンス部の面々を連れてやってくる。山口拓海は山田祥生に向かって目配せした。「お前のツケだな。どうやら和田家の長女は、まだお前のことを忘れちゃいないらしいぞ」

店に入るときには、和田美咲はすでに気持ちを切り替えていた。その口調は穏やかだ。「みんなここにいたのね。久しぶり」皆に挨拶しているようで、その視線はまっすぐに山田祥生を射抜い...

ログインして続きを読む