第4章

火曜の夜、私は図書館の三階に籠もり、熱力学の課題に集中しようと悪戦苦闘していた。しかし、昨日言われた梨乃の言葉が、壊れたレコードのように頭の中で鳴り響いてやまない。

彼女の言う通りだった。私は意図的にSNSから距離を置いていた。インスタグラムの投稿も、フェイスブックの更新もせず、リンクトインでさえ、慎重に選んだ男性の写真を使っていた。

静かな図書館に足音が響く。顔を上げると、拓海がまっすぐ私のテーブルに向かってくるところだった。その手には茶色い紙袋が提げられており、それを見ただけで胃が締め付けられる。

「よう、海」彼は私の向かいの椅子に滑り込むように座った。その声は低く、どこか親...

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