第9章

あの本に書かれた和也の言葉を、もう二十回は読み返しただろうか。それでも、どうすればいいのか決められずにいた。愛は愛として、私たちには向き合わなければならない現実的な問題が山積みだった。

「そっちで大丈夫か?」翔太さんの声が下から聞こえてきた。「もしやれるなら、見てもらいたいトランスミッションがあるんだけど」

仕事。考えすぎる私の頭を止めてくれる、唯一のもの。

「今、降りる!」と私は声を張り上げた。

階下に降りると、翔太は油圧ジャッキで持ち上げられた古いホンダを指さした。「オーナーが言うには、ギアが滑るらしい。たぶん全面的なオーバーホールが必要だろうけど、まずは中を見てみよう」

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