第10章 たった5万で身売りするの?

「もしもし、どちらさまですか?」

相手の応答は早かった。受話口から届いた声を聞いた瞬間、江森美鈴は、図書館で会ったあの男の声とは違う気がした。

けれど、この二年ほど記憶が曖昧だ。自分の聞き違いかもしれない。

名刺の姓をもう一度確かめるように視線を落とし、緊張で喉を鳴らしてから口を開く。

「佐藤さん、こんにちは。今日、図書館でお会いした者です。江森と申します。雑誌のイラストが一組足りないって……私に考えてみてほしいっておっしゃってましたよね。覚えていらっしゃいますか?」

その頃。

運転席の佐藤はスマホをスピーカーに切り替えていた。後部座席では、二宮慎矢が書類をめくっていた手をぴたり...

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