第105章 彼女を放すことは、彼にはできない

江森美鈴は視線を黒く沈んだ窓の外へ逸らし、それきり口を閉ざした。

風が出てきた。枝がざわざわと揺れている。どうか雪になりませんように。飛行機が飛びますように。

田中実里が無事に出ていけさえすれば――自分には、もう何も残らない。

二宮慎矢は踵を返してベッドのそばへ戻り、テーブルの上のスマホを手に取ると、彼女の目の前に置いた。

掌でくしゃりと髪を撫でる。美鈴が眉をひそめて避けた瞬間、彼は身を屈めて耳元へ。

「じゃあ、ちゃんと俺を見張ってろ」

江森美鈴は身を引き、膝を抱えるようにしてソファの上へ脚を畳んだ。

疲れている。慎矢が浴室へ入ったのを見届けると、彼のスマホを握りしめたまま、瞼...

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