第106章 死んで済むと思うな

「考えておく」

二宮慎矢は淡々とそう返すなり、通話をぶつりと切った。

向こうで二宮恵がさらに何か言おうとした瞬間、受話口から「ツー、ツー、ツー」と無機質な切断音が流れ、怒りで顔が歪む。

七年も失っていた息子を取り戻したというのに――どうしてこんなにも、懐かないのだろう。

あの一件以来、慎矢はずっと彼女に距離を置いている。

年長者への礼儀は欠かさない。だが、母子のあいだにあるはずの温度がない。

それどころか、逃げた女のほうを――実の母である自分より、よほど気にかけているように見えた。

電話を切った慎矢は、スマホを江森美鈴へ差し出した。彼女が受け取ろうと手を伸ばした瞬間、手首を掴み...

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