第118章 新谷理子、あなたは逃げられない

江森美鈴はティッシュを持つ手を、ぴたりと止めた。胸の奥に何かが引っかかったみたいに。

――情けをかけた?

精神病院へ放り込み、家も家族も壊し、角という角を削り落として、誇りも未来もへし折る。

夜中にふと夢から覚めて思い出すだけで、背筋が粟立つ過去の責め苦。

あれほど容赦のない男に、どうして心が揺れる。

揺れてたまるものか。

流れる水を見つめたまま、美鈴は言った。

「私が何をされたか、白崎さんは知ってるでしょう。誰よりも。私が情けをかけるわけがない。まして、許すなんて」

「なら、俺と来い。今が一番いいタイミングだ」

白崎亮介は淡々と重ねる。表情は変えず、視線は終始スマホの画面...

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