第141章 失った薬指、そこには本来指輪がはめられるはずだった

二宮慎矢が浴室から出てくると、ベッドの上の彼女はまだ眠っていた。

彼はそっと隣に横になり、腕の中へ抱き寄せる。すると、彼女が寝ぼけた声で、かすれ気味に呼んだ。

「慎矢兄さん……」

「ん?」

起きているのか確信が持てないまま覗き込むと、ちょうど彼女が目を開けるところだった。

その瞬間、慎矢の視線がわずかに泳ぐ。彼女が記憶を失ってからというもの、こうして真正面から見つめ合うのが、どうにも苦手だった。

まるで――ずっと欲しかったものを、こっそり手に入れて、嬉しくて掌に包み込んだくせに、堂々と味わう勇気だけがない。そんな気分。

江森美鈴は彼を見つめ、澄んだ瞳で問う。

「この二年……私...

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