第147章 二宮慎矢、記憶を取り戻したい

二宮慎矢は立ち上がり、「行くぞ」とだけ言った。

加藤に肩を貸される形で、牧野達也の家を後にする。

車に乗り込むと、前席から加藤が窺うように視線を寄こしてきた。慎矢は低い声で告げる。

「別荘へ」

車は勢いよく走り出す。慎矢の脳裏に、さっき牧野達也が投げた言葉が蘇る。

――もし彼女が演技だったら、お前はどうする?

どうするも何もない。

彼女が演じるなら、自分も知らないふりをして、同じ舞台に立つしかない。相手の筋書きに合わせて、将棋の駒みたいに動くしかない。ほかに手はない。

結局――自分が、彼女に借りを作った。

記憶が戻っていようがいまいが、借りは借りだ。

慎矢はシートに深くも...

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