第159章 彼女はまた逃げた

池田はずっとベッド脇から離れずに見張るように立っていた。江森美鈴は目を閉じている。けれど、眠ってはいない。

彼女は神経を研ぎ澄ませ、さっき外へ出たときと戻ってきたとき、廊下にどんな物音があったかを一つずつ思い返した。

病室の外からは、加藤や佐藤の声は聞こえなかった。池田以外に、二宮慎矢が誰かを連れてきた気配もない。

もし逃げるなら、池田と二宮慎矢をうまく遠ざけて、実里に廊下の様子を見てもらう必要がある。

でも、どこへ――行ける場所なんて、あるの?

二宮慎矢への信頼と依存は、実の両親に向けるそれと変わらないほどだった。なのに今は、誰も信じられない。自分のそばにあるものが、何もかも偽物...

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