第165章 一刺しで致命傷を与え、いっそ楽になってしまおう

彼の声は穏やかで、揺るぎない。なのに、それがかえって人を怖がらせた。

その瞬間、江森美鈴の脳裏に、刑務所で過ごした日々が生々しく蘇る。

――あの日。白崎亮介が、まったく同じ調子で言った言葉。

「江森美鈴。お前は死なせない」

部屋の扉が開き、外で待っていた二宮慎矢は、出てきた人影を見た途端、顔色を変えた。

白崎亮介が背後から江森美鈴を抱え込むように拘束している。鋭いメスが、彼女の喉元にぴたりと当てられていた。

白崎亮介の目は赤い。

「殺させろ。……それが嫌なら、連れていく」

二宮慎矢は両手を拳に握り締め、顎を強く引き結ぶ。やがて鼻で笑った。

「お前、本気で俺が『彼女を殺せる』...

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