第170章 今度は俺が命をやるから、戻ってきてくれないか

返事はない。彼女はもう、永遠に彼に返してはくれない。

憎しみでも、怨みでも、怒りでもいい。――それすら、もう彼に向けてはくれないのだ。

二宮慎矢は正気を失ったように透明なケースの蓋を押さえ、まるで自分に言い聞かせるように、何度も何度も呟いた。

「帰ろう。俺が連れて帰る。家に帰ろう」

蓋が開く。伸ばした指先が彼女の頬に触れた瞬間、背筋が凍るほどの冷たさが、じかに伝わってきた。

死んでいる。死んだのだ。生きている人間が、こんな温度であるはずがない。――彼女は、本当に死んだ。

二宮慎矢はその場に崩れ落ちた。顔色は死人のように白く、唇だけが小刻みに震える。音にならない。もう、触れることさ...

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