第171章 二年後

二年後。

R国、霞ヶ池。

三月、桜の季節。長く続く桜並木は、空まで埋め尽くすように花を咲かせていた。

淡い桃色と、澄んだ白。染井吉野が堀の両側を覆い、はらはらと舞う花びらが水面に散っていく。

ここは観光客の楽園だ。春の暖かな空気に誘われ、ボートを浮かべて花見をする人は数え切れない。

桜の下の芝生、そのいちばん目立たない隅で、白いロングワンピースの背中がスケッチボードを支え、黙々と絵を描いていた。

遠くのざわめきが薄く届く。彼女はときどき顔を上げて景色を確かめ、また鉛筆を走らせる。遠目には、そこに置き忘れられた一枚の絵そのものだった。

背後から、背の高い男がそっと近づく。ラフな私...

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