第177章 どれほど似ていても、彼の美鈴ではない

二宮慎矢は、彼女の不機嫌など意に介さない様子で、笑みを崩さずに問いを重ねた。

「小林さん、声が少し枯れてるよね。喉、怪我でもしたの?」

「いいえ。生まれつきです。子どもの頃からこうなので」

江森美鈴は硬い声で返す。

――嘘。

二年前、海に落ちたあの日からだ。海水で喉をやられた。風邪を引けば、乾いた嗄れがいっそう目立つ。

男が眉を上げ、長い指でノートパソコンを軽く叩く。彼女が視線を落とした瞬間、薬指の指輪が目に入った。

全部、彼のせいだ。

それでも、愛情があるように振る舞うのは、相変わらず上手い。

慎矢は何かを考え込むように黙り、やがて顔を上げて横目で彼女を見た。

「失礼を...

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