第211章 彼女に触るんじゃねえぞ

「美鈴、約束しただろ」

二宮慎矢の胸に、唐突に不安が芽生えた。立ち上がると江森美鈴へ歩み寄る。ソファに残した田中実里を抱き上げることすら、頭から抜け落ちていた。

まさか宮沢和也が、このタイミングでこんな入れ知恵をするとは思わなかった。

真田健太と違い、この数日、宮沢和也は慎矢に露骨な敵意を見せていなかった。さっき夕食を終え、慎矢が美鈴を連れて行こうとしたときも、止める言葉ひとつ口にしなかった。

だから慎矢も、ほとんど警戒していなかったのだ。だが今、宮沢は美鈴を焚きつけ、実里を連れて出て行けと言っている。しかも離婚と親権の書類は、慎矢がすでに署名してしまっていた。

たとえ今ここで書類...

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