第214章 俺が妻と認めるのは、美玲ただ一人だ

田中実里はおずおずと、けれど納得がいかない顔で江森美鈴を見上げた。

「ママ、実里、変なこと言っちゃった?」

「ううん。寝よう」

江森美鈴は娘をきゅっと抱き寄せ、目を閉じてそのまま眠りに戻る。

見なくてもわかる。二宮慎矢が、いまどんな顔をしているか。

田中実里が連れてきた淡いミントの匂いが、すぐそばにある。自分がいま感じているのが、気まずさなのか苛立ちなのか――その境目すら曖昧だった。

眠りは短い。江森美鈴は七時のアラームで叩き起こされた。

寝たのは明け方。睡眠が足りないどころか、まともに眠れていない。半分目を開けたまま手探りで起き上がり、いつもの癖で身支度をして出勤しようとして...

ログインして続きを読む