第27章 美鈴、わがままはだめだ

江森美鈴はスプーンを握る手が、ぴくりと震えた。二宮慎矢が「連れていきたい場所がある」と言う以上、ろくな所じゃないに決まっている。

けれど、選べる立場じゃないことも分かっていた。だから何も言わなかった。

二宮慎矢が出ていったあと、池田が田中実里を庭の芝生で遊ばせている間、美鈴は紙とペンを持って草の上に座り、絵を描き始めた。

ネットにはイラストのバイトがいくらでもある。今は仕事を失った身だ。これで少しでも稼いで、江森グループの借金を早く返し、父の刑を軽くできる可能性に賭けるしかない。

秋の陽射しはやわらかく、彼女の体に淡い影を落とした。

――自分は、すっかりカナリアになってしまった。

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