第44章 おとなしくして、君を泣かせたくない

車は別荘の前で止まった。二宮慎矢は降りるなり彼女の身体を抱え上げようとしたが、何度試しても持ち上がらない。

胸の傷が深い。腕にも力が入らなかった。

さっき警察署から抱えて出たときも、息が詰まって倒れそうになったばかりだ。

加藤が心配そうに駆け寄り、恐る恐る口を開く。

「旦那様……江森さんは、私が支えて中へ――」

二宮慎矢は傍に控えていた使用人へ視線を向けた。

「お前、来い。彼女を支えろ」

部屋へ戻ると、江森美鈴はベッドの縁に静かに腰を下ろし、ぼんやりと窓の外を見ていた。

二宮慎矢がソファを引き寄せ、正面に座って視界を塞ぐと、彼女は眉をひそめ、顔だけを横へ逸らす。

胸の奥が、...

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