第60章 遅すぎた愛は、道端の草よりも価値がない

ボディーガードは傘を差し、二宮慎矢の後ろについた。北栄の地下室を出て、そのまま別荘へ戻る。

リビングは灯りが煌々としているのに、音だけが消えたみたいに静かだった。江森美鈴と田中実里は、もう二階で寝ているのだろう。

二宮慎矢はソファに腰を落とした。ここ数年、彼女がそばにいなくても、特別寂しいと感じたことはなかった。

どこかでずっと思っていたのだ。あいつは、いつか戻ってくる――と。

けれど今夜は違う。急に冷えた。彼女が去った直後の二年よりも、もっと冷え冷えとしていた。

しばらく黙って座り続け、ふいに傍らに立つボディーガードへ視線を投げる。

「煙草」

ボディーガードは一瞬きょとんとし...

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