第61章 割れた鏡は元には戻らない

腕の中の女が必死にもがいた。二宮慎矢は一度その身体を離し、肩を押さえつける。

怯えきった瞳を見下ろし、低く言った。

「田中との過去は、もう追及しない。あの二年はなかったことにする。やり直そう。江森家のものは、全部お前に返す」

追及しない?

――は、はは。

江森美鈴は堪えきれず、声を漏らして笑った。

彼女は一度だって、彼に後ろめたいことなどしていない。なのに二年前、彼は雲の上から裁くみたいな顔で、彼女の言い分を一言も聞かず、地獄へ突き落とした。

そして今、二年経ってもなお、彼は「赦してやる」とでも言いたげな施し手のまま。

彼女が犯したという取り返しのつかない過ちを、自分はわざわ...

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