第63章 絶体絶命から這い上がる

牧野達也は一瞬ぎょっとし、そこにほんの少しの悪戯めいた色を滲ませたまま、ふっと笑い声を漏らした。

「二宮さん、それ……聞いててちょっと、みじめっすね」

二宮慎矢は答えない。グラスを傾け、酒を喉へ流し込む。

――頭の中は、勝手に同じ光景を繰り返し思い浮かべていた。

江森美鈴が飛びつくようにして、白崎亮介を抱きしめた、あの瞬間。

彼女はもう変わったのだと、ずっと思っていた。誰にも寄りかからない女になったのだと。

だが、さっきの姿は――二年前。悔しさに耐えきれず、彼の胸へ駆け込んできたときと、あまりにも似ていた。

変わったのは彼女じゃない。

今、彼女が頼り、信じる男が――自分ではな...

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