第64章 一石二鳥

井上虎之介を丸め込んで首を縦に振らせるなんて、せいぜい二、三言で足りる。

欲だけは底なし。けれど頭のほうは、所詮その程度。

新谷理子は、井上虎之介が上機嫌で車を走らせて去っていくのを見送り、口元に冷たい笑みを刻んだ。

二宮慎矢がどれほど潔癖か、彼女はよく知っている。たとえ江森美鈴をどれだけ愛していようと、一度でも「汚れた」女を受け入れるはずがない。

そのときになれば、井上虎之介だって生きてはいられない。

この一手が決まれば、一石二鳥。邪魔者はまとめて消える。

理子は車に戻り、エンジンをかけようとして――助手席に口紅が一本落ちているのに気づいた。

二宮恵が、ここに置き忘れたのだろ...

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