第67章 慎矢兄さん、暑い

別の個室。

江森美鈴は無理やりドリンクを飲まされ、ソファにぐったりと沈み込んでいた。

鍵の掛かった扉。残ったわずかな理性で、彼女は自分の上にのしかかる男の顔を見た。

横顔に走る刃物の傷。忌まわしい顔。――灰になっても忘れない。

美鈴は力なく口端を引きつらせる。

「……あんた、知ってる。二宮慎矢の人間でしょ」

二年前。こいつは二宮慎矢の指示で、精神病院のあの部屋で彼女の指を折り、殴りつけ、流産させた。

どうして今さら、またこんな男を寄こして自分を踏みにじるのか。考えようにも、もう考える力すら残っていない。

意識は霞み、爪がソファの生地に食い込む。涙だけが勝手に頬を伝った。――彼...

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