第71章 好きなら触りに来い

江森美鈴は、窓の外で勢いよく後ろへ流れていく街路樹を見つめたまま、冷えた声で言った。

「好きにすれば。――ただし、うちの父を出して」

どうせ彼の条件はもう呑んだ。子どもを産めと。

代わりに子を産むなんて、死ぬのと大差ない。今さら何を細かく言い合ったところで、何が変わるというのか。

車が実家の前で止まる。中へ入った瞬間、空気が妙に重いのがわかった。

会社前のあの取材は生中継だった。そこから、移動の三十分。

この時間なら、メディアが煽り立てた話はもう届いているはずだ。

リビングに足を踏み入れると、新谷理子が二宮恵の胸元に縋りつくようにして小さくすすり泣いていた。二宮恵は怒りで顔色が...

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