第79章 これ以上、変な期待を持たせないでくれ

「チャンス……?」

江森美鈴は口元をかすかに吊り上げた。可笑しくて仕方がない。

腹の中で死んだ子に、もう一度のチャンスなんてあるのか。

折れた指に、もう一度のチャンスなんてあるのか。

二年前、江森家を襲ったあの出来事を――なかったことにできるチャンスなんて、あるのか。

二宮慎矢。いったい、どの口で「もう一度」なんて言う。

江森美鈴は二宮慎矢の目をまっすぐ見返した。脳裏にいくつもの考えが矢継ぎ早に走る。

偽妊娠に気づいた?

それとも、私が出ていく準備をしていると疑ってる?

この男は昔から厄介だ。疑い深いだけじゃない。人の心の綻びを嗅ぎつける嗅覚が、異様に鋭い。

けれど美鈴は...

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