第87章 彼女を食べたくなった

二宮慎矢が振り返って彼女を一瞥した。ドアに斜めにもたれ、りんごをかじっている姿は――どこかハムスターみたいだ。

彼は目を細める。

「誰に迎えに来させたい?」

そう言いながら近づき、彼女の手の中のりんごに身をかがめて、ひと口かじった。

江森美鈴は顔色ひとつ変えず、そのまま食べ続けて返す。

「佐藤さんがいいって言ったら?」

「ダメ」

視線はりんごに落ちる。彼がかじった跡を、彼女がわざと同じ場所でもう一度かじったのが見えた。

「そう言うと思った」江森美鈴は眉を上げる。「できたら呼んで。ソファで待ってる」

いったん出ていき、また戻ってくると、調理台の上のパクチーを指さした。

「そ...

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