第89章 愛おしそうに、美鈴、美鈴と低く囁く

江森美鈴は彼の腕をそっと押しのけ、車のドアを開けて助手席に滑り込んだ。

二宮慎矢も乗り込み、間近で彼女の赤くなった目元を覗き込む。

低い声が落ちた。

「……また泣いたのか」

「泣いてない」

ぶっきらぼうに返して、身体ごと窓のほうへ向ける。

二宮慎矢は手を伸ばし、彼女の肩を押さえてこちらへ向けた。言い訳めいた口調で、噛み砕くように説明する。

「監視じゃない。お前、まだ妊娠してるだろ。外に一人置いとけば、具合が悪くなったときに病院へ連れていける」

江森美鈴は眉を寄せ、露骨に嫌そうな顔をした。

「うつ病なだけで、バカじゃない」

二宮慎矢はさすがに後ろめたいのか、彼女の腕をそっと...

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