第94章 それなら俺を息子と思わないでくれ

江森美鈴は、その夜どうしても眠れなかった。

あの別荘に閉じ込められていた頃、いつも思っていた。いつか無事に逃げ出せたなら、欠け落ちた睡眠を取り戻すみたいに、思いきり眠ってやるんだって。

けれど本当に抜け出してみると、胸の奥の不安は、むしろ濃くなっていく。

彼女は身を起こしてベッドを降り、バッグから睡眠薬の瓶を取り出した。

蓋をひねったところで思い出す。眠れなさすぎて、勝手に量を増やして飲んでいたせいで――もう空だった。

上着を羽織って部屋を出る。白崎亮介が眠っているか確かめて、薬を少し分けてもらおうと思ったのだ。

廊下を曲がると、書斎から灯りがこぼれていた。扉は半開き。

近づき...

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