第96章 美鈴、君なのか

白崎亮介が階下へ降りると、江森美鈴がレストランのロビーに立っていた。壁際にもたれ、俯いたまま手袋を外している。

まばゆい照明に照らされる中。行き交う、へつらい合う人波の中で、彼女だけが不思議なほど静かだった。

まるで壁に掛かった一枚の絵。黙して目を引き、どこか寂しさをまとっている。

ほろ酔いの男が通りすがりに、つい横目で彼女を追うこともある。

白崎は歩みを速めた。声をかける前に、彼女が顔を上げてこちらに気づく。

冷ややかな表情に、ふっと笑みが差した。その一瞬で、白崎の気分まで軽くなる。

エレベーターへ案内しながら、白崎は笑って訊いた。

「今、着いたところ?」

「うん。ちょっと...

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