第4章

九条雅視点

テニス国際大会のメインコートは、熱気に包まれていた。私はVIP席で、人々の視線を集めるには十分なほど胸元の開いた、赤いオフショルダーのドレスをまとっていた。

けれど、私の視線はコートに釘付けだった。

冴島颯斗がウォーミングアップをしている。太陽の光が、彫刻のように鍛え上げられた彼の筋肉を照らし、きらめいていた。ラケットを振るたびに、その完璧な肉体美が見せつけられる。黒いスポーツシャツが胸に張り付き、力強い腕としなやかな首筋のラインを際立たせていた。

「いい体ね」と私は呟き、悪戯っぽく口笛を吹いた。

一流の感情暗殺者として、極上の獲物を吟味するのも仕事のうちだ。...

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