第7章
九条雅視点
三週間後。
ホテルを出てから、冴島颯斗は私を宝物のように扱った。彼の豪華なマンションに滞在し、日に十数回も様子を見に来ては――気分はどう、大丈夫かと尋ねてくる。
冴島京介からの連絡はなかった。冴島颯斗の話によれば、兄は彼を完全に勘当し、家業の株まで取り上げたらしい。
「私のせいだわ」
昨夜、私は罪悪感に満ちた声で言った。
「お兄さんに奪われてしまって」
「いや、君のせいじゃない。俺が選んだことだ」
彼は私を強く抱きしめ、額にキスをした。
「雅、君さえいればいい」
なんて、甘い男。
明日はテニス国際大会の決勝――冴島颯斗にとって、これまでで最も...
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