第1章:みんなに会えてよかった
ブライオニー視点
「今日は新しい生徒が転入してくる」数学教師が教室の前で咳払いをした。
ひそひそ声が火の手みたいに広がった。ポラリス高校で転入生なんて滅多にいない。しかも学期の途中なんてなおさらだ。私はいつもの、教室のいちばん後ろの隅の席から動かなかった――誰からも見えないままでいられる、ちょうどいい距離だ。
肩書きだけなら、ベータであるレイモンドの娘の私は、アルファの家族のすぐ下に位置するはずだった。現実はどうかって? 私はどのオメガよりも下だった。理由は単純。母は私を産んで死に、父はその責任が誰にあるのかを一度も忘れさせてくれなかった。
殺人者。十五年間、その烙印がずっと私の背中に貼りついている。
父はもう私の顔すらまともに見られない。父にとって私は娘じゃない――伴侶を奪ったもの、ただそれだけだった。皆が言う。私は母にそっくりだと。淡い金色の髪も、煙るような青い目も。同じものを見せるたびに、父は失ったものを思い出す。
兄のノアは、小さい頃は私を守ってくれた。でも彼も少しずつ離れていった。将来のベータとしての訓練で忙しくなったし、父の機嫌を取るには、私が目に入らないほうが楽だったのだろう。
学校はもっとひどかった。「母親を殺した子」と友だちになりたい者なんていない。ヴィクトリアがそれを徹底させた。父親が学校理事会にいるのをいいことに、気分次第で私の生活を地獄にしてくる。
背の高い女子が教室に入ってきて、思考を断ち切った。黒く波打つ髪に、明るい琥珀色の目。ジーンズに白いTシャツというだけの格好なのに、まるでこの場所が自分のものだと言わんばかりの歩き方をしていた。
「やあ、みんな。レイラです」声ははっきりしていて、親しみやすい。「会えてうれしいよ」
教師が教室を見回した。「空いてる席に座りなさい、レイラ」
私は顔を伏せ、教科書を読んでいるふりをした。前のほうには空席がいくらでもある。普通の子たちが座る場所だ。後ろの隅が選ばれることなんてない。変わり者の隣に、わざわざ座る者なんていない。
好奇心がある人間でさえ、私の話を知った途端にさっと引く――それか、ヴィクトリアが引かせる。経験が教えてくれた。
見えないままでいよう。そう自分に言い聞かせる。そうするのが、みんなにとっていちばん楽だから。
新しい子はまっすぐ後ろの列に向かってきた。皆の驚いた視線の中、彼女は私の真横の椅子を引き、椅子が床をこする音がした。
「ここ、座ってる人いる?」小さな声で彼女が尋ねた。
私ははっとして顔を上げた。近くで見ると、さらにきれいだった。健康的なオリーブ色の肌。鍛えた体つきは、戦い方を知っていると言っているみたいだった。
「い、いない……」どもりながら答える。「でも、たぶんあなたは……」
「最高」彼女は笑って私の言葉を遮り、そのまま席に腰を下ろした。「レイラ。まあ、見ればわかるよね。あなたは?」
私は彼女を見つめた。本当に私の隣を選んだ? 何かの間違いに決まってる。事情を知ったら、明日にはいなくなる。教室の空気が変わったのがわかった――驚きと、同情。みんな、彼女が大きな失敗をしたと知っているのだ。
「ブライオニー」私は囁くように言った。「ブリでいい」
「いいね、ブリ」レイラの笑顔は作り物じゃなかった。それが私を完全に戸惑わせた。
教師が授業を始めた。上級微分積分――このクラスを取れるのは成績上位の生徒だけだ。私は難しいことがやりたくて選んだし、ヴィクトリアと取り巻きは頭が足りなくて資格がない。ここだけは、少しは静かにしていられる。
「きつそう」レイラが小声で言いながら、ものすごい速さでノートを取る。
「もし手伝いが必要なら、私が……」言いかけて止めた。なぜ申し出る? そんなことをしたら彼女が巻き込まれる。ヴィクトリアに、私に近づく人間がいると知られたら――それで終わりだ。
「それ最高!」レイラの目がぱっと明るくなった。「前の学校でも似たのはやったけど、先生が違うと進め方も違うじゃん。勉強相手、いてくれたら助かる」
勉強相手。よそ者。
――長くは続かない。――頭の奥深くから、私の狼が囁いた。そう、私の狼。私のいちばんの秘密――私は十四歳で目覚めてしまった。予定より二年も早く。あれは、ヴィクトリアにこれまでで最悪の折檻を受けた直後だった。私を守るために狼が表に出てきたのだ。もし私が、次代の指導者たちより先に目覚めたと知られたら、私は殺される。
――わかってる。――私は彼女に答える。――でも、友だちがいるふりをするのって、ちょっといい気分だよ。――
授業の途中、前の席の女子たちが何度も振り返ってこちらを見た。顔に浮かんでいるのは、あからさまな憐れみ――かわいそうな転校生は、自分が何に首を突っ込んだのかもわかっていない、という目だ。
「この解き方、すごくうまいね」レイラは周囲の視線などまるで気にせず、黒板を指さした。「先生、ほんとにわかってる人だ」
私はうなずき、ノートに意識を戻した。彼女の落ち着きには感心する。たいていの人なら、この妙な空気を感じた瞬間に逃げ出すだろうに、レイラはまるで動じていない。まだここの掟を理解していないだけかもしれない。
チャイムが鳴ると、私は素早く荷物をまとめた。次は身体訓練で、ロッカールームが混む前に着替えなければならない。人が少なければヴィクトリアに遭遇する確率も下がるし、誰にも……痕を見られずに済む。
「次、なに?」レイラが本を押し込みながら聞いた。
「身体訓練。必修だから」私は短く答えた。「もう練習着、持ってるよね?」
「うん、ロッカーに入れてる」彼女は立ち上がった。「一緒に着替えに行かない?」
私はためらった。誰かとロッカールームへ行けば、ヴィクトリアやあいつらの群れに出くわすかもしれない。けれど、期待に満ちたレイラの顔を見てしまうと、断れなかった。たった一度くらい、普通のふりをしてもいいのかもしれない。
「……うん」私は渋々答え、ヴィクトリアが別の場所で忙しくしているよう祈った。
廊下を歩く間、背中に突き刺さる視線が熱かった。ひそひそ声が後を追う。
「新しい子だ……」
「……あの子と、ほんとに話してる……」
「……ブライオニー? 母親を殺したっていう……」
「……ヴィクトリア、ぶち切れるぞ……」
私は俯いて足を速めた。こういう言葉はもう日常だ。けれどレイラはまるで気にしていないらしく、廊下の飾り付けを眺めていた。
「ここ、広いね」彼女が言う。「前の学校よりずっと大きい」
「ポラリス高校は、群れの縄張り全体をカバーしてるの」私はなるべく普通に聞こえるよう説明した。「みんなを収容しなきゃいけないから」
ロッカールームに着いたとき、すでに中は賑やかだった。私は素早く見回す――ヴィクトリアの姿はない。今日は運がいいかもしれない。
「私はあっちで着替える」私は奥の隅の個室を指した。いつもの場所――隠れられる、安全な場所。見られたくないものを誰にも見られない場所だ。
「なんで? ここでいいじゃん」レイラは困った顔で、開けたスペースを示した。
「一人のほうが落ち着くの」私は曖昧に言い、バッグを掴んで個室へ急いだ。
誰にも見せるわけにはいかない。鞭の跡、銀で焼けた痕、ヴィクトリアと取り巻きが私の身体に残していった数々の「土産」。もし誰かに見られて通報されれば、状況はもっと悪くなるだけだ。ヴィクトリアの父親は学校評議会に影響力があり、真実などいくらでもねじ曲げられる。
個室の中で、私は扉にもたれて震える息を吐いた。早く着替えて、ヴィクトリアが来る前に出る。制服を脱ぎ捨て、訓練着に手を伸ばしたそのとき、いちばん聞きたくない声が耳に刺さった。
「まあまあ。誰がいるかと思えば」ヴィクトリアの声が、喧騒を刃物みたいに切り裂いた。「うちのちっぽけな出来損ないが、また隅っこで隠れてる。相変わらずみっともないわね」
