第185章

 夕暮れどき。

 高橋逸人は車を水原家の門の前に停め、助手席で落ち着きなくしている水原蛍へと顔を向けた。

「入らないつもりか?」

「まだ、決めてないだけ」

 本当は一人で来るつもりだった。退社間際に何気なく「これから実家に行く」と口にしただけなのに、この男は「村田舟は怪我して運転できないから、俺が送る」ともっともらしいことを言い出し、そのまま強引についてきたのだ。

 高橋逸人の唇がわずかに上がる。

「口では『どうでもいい』なんて言ってるけどさ。きょうまた水原さんの謝罪動画、見てただろ。心のどこかで、まだ父親だって思ってるからじゃないのか。そうじゃなきゃ、一言呼ばれただけで戻ってき...

ログインして続きを読む