第192章

来電表示を見た瞬間、彼女はふっと笑みを浮かべ、携帯を耳に当てた。

「もしもし?」

『あの、蛍さん、違約金の件なんですがね、もう一度話し合いませんか。ほんとに訴訟なんてことになったら、さすがにお互い気まずくなるでしょう』

電話の相手は桜井だった。

水原蛍は、先ほどまでとは違う丁寧な口調に変わったのを感じ取り、唇の端をすっと上げる。

「桜井さん。訴えるって決めた以上は、とことんやらせてもらいます。うちのソウルジュエリー工房が、そう簡単に泣き寝入りするところに見えましたか。そちらが一方的に契約を反故にしておきながら、補償も払う気がない。……それで穏便に済ませろと? 虫が良すぎるとは思いま...

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