第209章

水原蛍は綾辻家の人間で、高橋逸人は高橋家。ふたりは水と油、絶対に相容れない関係――この事実さえ突きつければ、ふたりの縁など一瞬で断ち切れるはずだった。

けれど、よほどのことがない限り、それは使いたくない。

高橋逸人の母親の死に関する一件が露見するかもしれない。それを恐れている、というのもひとつ。

だが一番の理由は別にある。そんな手を使って無理やり引き裂いたところで、高橋逸人の心の中には、きっとあの女の居場所が残る。自分にすべてを預けることは、まずない。

自分が欲しいのは、それではない。

高橋逸人に完全に諦めさせること。水原蛍を、きっぱりと手放させること。そして、その視線を自分だけに...

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