第210章

「高橋逸人、先に離して」

水原蛍は、誰かに見られるのが嫌でたまらなかった。特に、新田未奈がいつ戻ってくるか分からない状況でなおさらだ。

「俺のこと、恋しかったか?」

高橋逸人は彼女の顎を指先でつまみ、逃げ場を与えない視線で問いかけてくる。

水原蛍のまつ毛が、かすかに震えた。ふと脳裏に浮かんだのは、あの日天城古雅が嵌めていたあの扳指――あれが彼からの贈り物だという話。唇を噛みしめ、ぐっと顔を背ける。

「恋しくなんてない」

高橋逸人の瞳の色がわずかに翳り、きゅっと結ばれていた唇が開いた。

「松本家のあの敬様のせいか? それとも井浦涼真か? あの二人のヒモが気に入った?」

……何?...

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